Platform Engineering

Platform Engineering 2025:GitOpsを超えてインテリジェンスへ

~プラットフォームチームは、受動的な運用からAI支援によるインフラ管理へと進化する~

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プラットフォームエンジニアリングは、いま大きな転換点を迎えています。

この5年間、業界はGitOpsのワークフローやInfrastructure as Code(IaC)の洗練に注力してきましたが、KubeCon Japan 2025では次なる進化が明らかになりました――予測し、適応し、自己最適化するインテリジェントなプラットフォームです。

これは人間の専門知識を置き換えるものではありません。

むしろ、AIによるインサイトを活用して、従来の「事後対応型」の運用を「先回りして最適化する」オーケストレーションへと進化させることを意味しています。

プラットフォームエンジニアリングの進化

世代

主な焦点

代表的なツール

マインドセット

制約

第一世代(2015〜2020)

手作業の自動化

Ansible、Terraform、Jenkins

「Infrastructure as Code(コードとしてのインフラ)」

リアクティブ(問題が起きてから対応)

第二世代(2020〜2024)

宣言的インフラとセルフサービス

ArgoCD、Flux、Backstage、Crossplane

「Platform as Product(プロダクトとしてのプラットフォーム)」

静的ポリシー、手動での最適化

第三世代(2024年以降)

AI支援による運用と自律的な最適化

K8s GPT、ForecastAI Scheduler、OpenCost AI

「Platform as Intelligence(知能としてのプラットフォーム)」

ツールは発展途上、スキルギャップ

インテリジェンス・レイヤー:どう変わっているのか

リアクティブから予測型オペレーション

従来のアプローチ:

インシデント発生 → アラート → 人間が調査 → 手動で修正 → ポストモーテム

インテリジェントなアプローチ:

パターン検知 → 予測生成 → 自動防止 → 継続的な学習

予測型オペレーションを導入したチームでは、アラートのノイズが60%削減され、平均復旧時間(MTTR)も数時間から数分に短縮されたと報告されています。

静的ポリシーから動的最適化

従来のプラットフォームエンジニアリング:

  • 固定されたリソースクォータと制限
  • 静的なスケーリングポリシー
  • 手動によるキャパシティプランニング

インテリジェント・プラットフォームエンジニアリング:

  • ワークロードのパターンに応じた動的リソース配分
  • 過去のデータとMLモデルを活用した予測的スケーリング
  • 需要予測に基づく自律的なキャパシティプランニング

このような最適化を導入した組織では、インフラコストが最大40%削減され、アプリケーションのパフォーマンスも向上しています(KubeCon 2025調査、n=27組織)。

設定ファイルから会話型インターフェース

K8s GPTAokumo AI の登場により、プラットフォームチームとインフラの関係が大きく変わりつつあります。

これまでのYAMLベースの構成管理から、自然言語での「会話」による管理へとシフトしています。

会話の例:

  • プラットフォームエンジニア:
  • 「GPUの利用率が低いのに、コストが高いんだよね」
  • AIアシスタント:
  • 「分析によると、プリフィルフェーズ中にGPUの60%がアイドル状態です。
  • 分離型サービングに変更すれば、利用率が94%に上がり、月額コストを12,000ドル削減できます。
  • LeaderWorkerSetの構成を自動生成しましょうか?」

Aokumoのようなプラットフォームはすでに、こうした「会話型インフラ管理」を実現しており、チームが意図を自然言語で伝えるだけで、最適化されたKubernetes構成を自動で提案・生成できるようになっています。

開発者体験の進化

インテントベースのインフラ(Intent-Based Infrastructure)

なぜ重要なのか:

プラットフォームチームがYAMLの門番になるのをやめ、ビジネス成果の提供に集中できるようになるからです。

開発者はビジネス上の要件を自然言語や宣言的な形式で表現し、インテリジェントなプラットフォームがそれを最適な技術実装へと変換します。

AIによる自動実装の例:

  • 高可用性のためのマルチリージョン展開
  • レイテンシ最適化のためのインテリジェントキャッシュ
  • コスト削減のためのスポットインスタンス活用
  • SOC2準拠を担保するためのOPAテンプレートによる自動コンプライアンス制御

自己最適化クラスターの登場

KubeCon Japan 2025では、ワークロードのパターンに応じてリソース配分を自動調整する「自己最適化クラスター」が各社から発表されました。

主な機能:

  • ワークロード・フィンガープリンティング:
  • 各ワークロードのリソース使用パターンを把握
  • QoSを保証するコスト最適スケジューリング:
  • 品質とコストのバランスをとったインテリジェントな配置
  • 異種ハードウェア間でのスマートなビンパッキング:
  • GPU・CPU混在環境などでの最適なリソース配置

ケーススタディ/企業事例:テナント中心のインテリジェンス

あるグローバル消費者向けテクノロジー企業が、インテリジェント自動化によるテナント中心のマルチクラスター管理へと進化した事例を発表しました。

従来のプラットフォーム運用(V1〜V3):

  • クラスターの手動プロビジョニング
  • 静的なリソース割当
  • 問題が起きてからの対応(リアクティブ)

インテリジェントなプラットフォーム運用(V4):

  • Pklテンプレートによるスキーマ検証と自動生成
  • ProwワークフローとAIによるPR最適化
  • ML活用のリソース推奨付きAPIサーバ
  • Kubernetesネイティブのラベル機能によるスマートなワークロード配置
成果:
プラットフォームがテナントの利用パターンを学習し、配置最適化・容量予測・問題予防をユーザー影響前に実施できるようになる。

中央の知能 × 分散された実行

中央インテリジェンス・ハブ:

  • パターン認識エンジン
  • ポリシー最適化
  • グローバルリソース調整

分散実行クラスター:

  • ローカルリソース管理
  • ワークロード最適化
  • フィードバックループによる学習

グローバル最適化とローカルの即応性を両立するアーキテクチャ

実践される「運用インテリジェンス」

容量計画の革命:

  • 従来: 四半期ごとのレビュー、過剰なリソース確保、手作業による予測
  • 今: 機械学習を用いた継続的な容量モデリング 信頼区間付きのJITプロビジョニング ビジネス指標も加味した多変量予測

インシデント予防:

  • ある金融データ企業はEnvoy AI Gateway導入により、従来の監視では見えなかったパターンを発見: トークン使用の予兆から容量枯渇を予測 レイテンシの相関からフェイルオーバーの最適タイミングを調整 リクエストパターン分析でレート制限違反を予防

セキュリティの進化:

次世代のセキュリティはプラットフォーム運用に組み込まれる

  • ワークロード異常の行動分析
  • 自動コンプライアンス検証と監査証跡の生成
  • ゼロトラストネットワークMLによるマイクロセグメンテーション(Cilium Tetragon)

テクノロジースタックの進化

Platform engineering beyond 2025

従来のプラットフォームスタック

インテリジェント・プラットフォームスタック(2025年以降)

Prometheus, Grafana などのモニタリング

行動分析・インテント関連付けによる高度な可観測性

ArgoCD, Flux によるGitOps

AI生成構成・予測的デプロイによるGitOpsの進化

Terraform, Crossplane 等のIaC

動的リソース配分・コスト意識型IaC

主な技術エネーブラー:

インテリジェント・プラットフォームのKPI

従来の指標

新しい指標

MTTR(平均復旧時間)

MTTP(平均予防時間):平均15分で予測から対処まで

デプロイ頻度

最適化効果:AI推奨によるコスト/性能改善 30〜40%

インフラコスト

予測精度:容量/性能の予測精度 85%以上

なし

自律的解決率:60%の問題が人手なしで解決

なし

予測リードタイム:問題発生の2〜24時間前に対処

実際の導入効果(KubeCon '25 調査)

  • インフラコスト40%削減(インテリジェント配置による)
  • 本番環境のインシデント80%削減(パターン予測による)
  • 開発者の生産性60%向上(インテントベース・インフラによる)

課題と配慮すべき点

技術的課題

  • データ品質(高品質なテレメトリが必須)
  • モデル学習に必要な十分な履歴データ
  • 異種システム間での統合の複雑さ

組織的課題

  • AIリテラシーの獲得
  • リアクティブから予測型へのマインドセット転換
  • 自動化に対する信頼の構築

リスク低減戦略

  • 段階的導入: 低リスクな領域からAI最適化を開始
  • 人間の関与: 重要判断には承認プロセスを残す
  • ロールバック機能: AIの提案は常に簡単に巻き戻せるように

プラットフォームエンジニアリングの未来

今後2〜3年:

AIアシスタントが標準ツール化し、一般的なユースケースでの予測能力が成熟

今後5〜10年:

自己最適化インフラが標準化し、プラットフォームエンジニアはビジネスロジックに集中

プラットフォームエンジニアの進化する役割

これまで:インフラ管理者、構成ファイルの守護者

これから:プラットフォームプロダクトマネージャー、AIシステムアーキテクト

新しい責務:

  • インテリジェントな体験設計
  • 組織ニーズに合わせたAIの学習と調整
  • 人間の知見とAIの連携をマネジメント

結論:インテリジェント・プラットフォームの優位性

プラットフォームエンジニアリングは、リアクティブな運用からAIによる知能型運用へと進化しています。

この変革を受け入れた組織は、開発者体験を飛躍的に向上させながら、運用負荷を大幅に削減しています。

得られる競争優位:

  • コスト削減と最適化の加速
  • 問題の未然防止による信頼性向上
  • 開発者の生産性向上
  • 自己サービス化されたインテリジェンスによるイノベーションの高速化

最後に問いかけ:

あなたのプラットフォームチームは、どんなインテリジェンス機能を構築していますか?

リアクティブから予測型への移行に、どのように備えていますか?

お問い合わせは→ https://aokumo.io/jp/contact/